日本株市場では、TOPIXが2,900ポイント台を回復し、堅調な地合いが続いている。しかしながら、主力銘柄や大型グロース株に資金が集中する一方で、PER(株価収益率)10倍以下と割安でありながら、業績が急拡大している中小型株がいくつか存在している。こうした「市場の盲点」とも言える銘柄に注目が集まりつつある。
本記事では、最新の決算データをもとに、成長加速中かつPERが依然として10倍を下回っている3銘柄をピックアップ。なぜ市場はこれらを見落としているのか、そして今後の株価上昇余地はあるのかを考察する。
割安成長株①:トレックス・セミコンダクター(6616)
2025年5月13日に発表された2025年3月期決算では、売上高が前年比+18.3%の310億円、営業利益は+35.6%の58億円と大幅増益。自動車および産業機器向け電源ICの需要が世界的に高まっており、車載電装化の流れを背景に収益が拡大している。
それにもかかわらず、現在の株価水準でのPERは9.4倍、PBRは1.2倍。自己資本比率は70%を超えており、財務も健全。中期経営計画でもさらなる利益成長を見込んでおり、今後の株価上昇が期待される。
割安成長株②:イワキ(8095)
医薬品原料や化学品を取り扱う専門商社であるイワキは、2025年4月15日に発表した2025年11月期第1四半期決算で、経常利益が前年同期比+28.7%の18億円に急増。製薬業界の回復に伴い、取引量が増加している。
注目すべきはそのPERで、現在8.2倍。配当利回りも3.1%と魅力的だ。加えて、2025年には新たに医薬品物流センターを稼働させる計画が進行中で、物流機能の強化が業績寄与に繋がる見通しだ。
割安成長株③:アドバンテッジリスクマネジメント(8769)
メンタルヘルス支援やEAP(従業員支援プログラム)を提供する同社は、人的資本経営の潮流に乗って法人契約を着実に増やしている。2025年3月期決算では売上高が+12.4%、営業利益が+30.1%と高い成長率を記録。
現在のPERは9.1倍、自己資本比率は65%。また、2025年度のガイダンスでは営業利益の15%成長を見込んでおり、安定的な収益基盤を構築しつつある。人的資本の開示義務化を背景に、さらなるサービス需要が見込まれる。
なぜ「割安」なのか?
これらの銘柄に共通するのは、成長力に比べて市場評価がまだ追いついていない点である。その背景には、①中小型株であるため機関投資家の注目が薄い、②アナリストによるカバレッジが限定的、③地味な業種イメージが敬遠されやすい、といった要因がある。
しかし、2025年に入り、米国の金利上昇が一服し、国内個人投資家を中心に割安株への関心が再び高まっている。加えて、東証によるPBR1倍割れ企業への改善要請や企業の自社株買いの増加も、評価見直しを後押しする可能性がある。
今後の注目点
足元の業績だけでなく、次の決算(2025年7月~8月発表予定)でのガイダンス更新にも注視したい。また、政府のスタートアップ支援政策や脱炭素関連の投資が続く中で、今後の業績拡大余地が大きい企業も多数存在する。
短期的な材料ではなく、中長期的な成長性と財務健全性を見極めることが、「真の割安成長株」を見つけるカギとなるだろう。